大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所宮崎支部 昭和24年(ネ)16号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「一、原判決を取り消す。二、被控訴人は訴外中郷村農地委員会の樹立した農地買収から中郷村上高一〇、五五二畑一反六畝(以下(一)の畑地と略称する)、同村秀原一〇、四四八の二畑一反八畝七歩(以下(二)の畑と略称する)を除外すること。三、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において「被控訴人作成名義の裁決書の日附は昭和二二年一〇月三〇日と記載されているが、実際は右裁決は同日なされたものではなく、昭和二三年一、二月頃なされた上、右裁決書は同年三月一一日に中郷村農地委員会に送達せられ、更に翌三月一二日同委員会より控訴人宛に発送せられ同月一四日控訴人に到達し、控訴人は同日右裁決のあつたことを知つたのであるから、同年二月二六日に訴状を郵送し同年三月三日に原審に受付けられた本訴は出訴期間経過後の不適法なものではない」と述べ、被控訴代理人において、「本件裁決は昭和二二年一〇月三〇日になされたものである」と述べたほか、原判決の事実摘示と同一であるから、引用する。

(立証省略)

理由

よつて先ず本訴の提起が適法であるかどうかを調べて見るに、昭和二二年一二月二六日法律第二四一号自作農創設特別措置法の改正法律第四七条の二第一項及び附則第七条によると、右改正法律施行前にした自作農特別措置法による行政庁の処分で違法なものの取消又は変更を求める訴は、右改正法律施行前にその処分のあつたことを知つた者にあつては右改正法律施行の日である昭和二二年一二月二六日から一箇月以内に提起しなければならないし、又仮に知らなかつた場合でも、右施行日から二箇月を経過したときは訴を提起することができない旨規定されているのであるが、成立に争がない乙第一、二号証同第三号証の一、二及び同第六号証日附以外の部分の成立につき当事者間に争がないので反証がない限り日附の部分の成立をも是認すべき乙第四、五号証によると、控訴人は控訴人所有の農地につき訴外宮崎県北諸県郡中郷村農地委員会が樹立した自作農創設特別措置法による買収計画に対し昭和二二年八月二二日異議の申立をなし、右訴外委員会は同年九月一三日右異議の申立を棄却する旨の決定をしたので、控訴人は同年一〇月初旬被控訴委員会に訴願したところ、被控訴委員会は同年一〇月三〇日に訴願理由は成立しない旨の裁決をし且その当時前記訴外委員会の買収計画を承認したことが明らかであるから、たとえ控訴人においてその主張のように被控訴委員会の右処分のあつたことを前記法律改正前には知らなかつたものであり且知らなかつたことについて正当な理由があるとしても、右行政処分の取消を求むるには改正法律施行の日である昭和二二年一二月二六日から二箇月以内の昭和二三年二月二六日までに出訴しなければならならい筋合であるところ、本任訴状が原裁判所に提出されたのは同年三月三日であることは記録上明白であるから、結局本訴は法定の出訴期間経過後に提起された不適法なものであるといわなければならない。控訴人は被控訴委員会の右裁決等の処分は昭和二二年一〇月三〇日になされたものではなく昭和二三年一、二月頃になつてなされたものであるから、本訴は出訴期間内に提起されたものであると主張するけれども、控訴人の全立証を以てしても前記認定を覆えし控訴人主張の時期に右処分がなされたことを肯認することができないから、右主張は採用できない。

以上の理由であるから、控訴人の訴を却下した原判決を相当と認め本件控訴を棄却することとし、民事訴訟法第九五条、第八九条に則り、主文のとおり判決をする。(昭和二七年二月一一日福岡高等裁判所宮崎支部)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例